世界の経営学者はいま何を考えているのか。そもそも経営学とは?

早稲田大学ビジネススクール准教授の入山章栄さんの「世界の経営学者はいま何を考えているのか」を読まさせていただきました。

経営学者の様々な研究を取り上げ、日本ではあまり知られていない本場の経営学をわかりやすい語り口で紹介してくれてとても良かったです。

その中で、個人的に興味深かったところをメモしておきます。

「まずは、そもそも経営学ってなんなの?」 ってとこから。

目次

  1. 居酒屋トークとは別物
  2. 経営学に教科書は存在しない
  3. ホフステッド指数
  4. 両利きの経営
  5. おわりに

居酒屋トークとは別物

そもそも経営学とは何なのでしょうか。

「企業を運営するための学問?」

「企業する人が学ぶ学問?」

「金儲け?」

人それぞれ違った考えを持っているのではないでしょうか。

著者いわく、経営学は科学を目指ざすものだそうです。科学とは「世の中の真理を探求するもの」なので、経営学は「企業経営の真理を探求するもの」ということになります。

よく居酒屋でサラリーマンが、

「今は攻めの経営が必要だよなあ。うちの上司はそこがわかっていない」

「日本人は集団主義だから個人主義な国の企業とは相容れないんだよ」

などといいますが、これは「一般的な法則のように聞こえるもの」を語っているだけであり、経営学ではないそうです。経営学は、この「一般的な法則のように聞こえるもの」を理論(仮説)とし、実証(実験)することで、より正確に企業経営の真理を明らかにするものだそうです。

経営学に教科書は存在しない

経営学にはすべての内容の骨組みをまとめた基本書、いわば教科書が存在しません。なぜ、教科書が存在しないかというと、経営学には流派(宗派のようなもの)が存在するからだそうです。

具体的には、

・経済学ディシプリン

経済学に存在する、「人は本質的には合理的な選択をする」という仮定に基礎を置く流派

・社会学ディシプリン

組織と組織がどのように「社会的に」相互作用するのか、という研究をする流派

・認知心理学ディシプリン

経済学が想定するほどに人は情報を処理する能力がなく、それが組織にも影響をもたらす、という仮定に基礎を置く流派

この3つの流派があり、身を置く流派が変われば企業経営の捉え方も大幅に変わりうるため、教科書が存在しないそうです。ですんで、経営学を追求する上での第一段階は、身を置く流派を決めることになりますね。

以下、興味深かったところ。

ホフステッド指数

ホフステッド指数とは、4つの概念(個人主義・集団主義・不確実性回避傾向・自己主張重視度)から国民性を明らかにするものです。

これを用いた国民性の分析の中で、とても興味深い部分がありました。

日本人は集団主義で、個人よりも組織を重んじていると考えている人がほとんどだったと思います。僕もそうでした。ですが、主要69カ国の中で、日本人の個人主義は32番目に強いそうで、アジアの国々の中では抜きん出て個人主義的な傾向が強いそうです!

これを知ったとき、結構驚きました。染み付いた固定観念って怖いですよね。「日本人は集団主義だから、個人主義の国の人とは相容れないんだよ」といった考えは、固定観念に過ぎないということです。心をフラットにすべきですね。

ちなみに、この固定観念が染み付いた原因は、個人主義傾向が一番強いアメリカや、上位に位置するヨーロッパの国々と国民性を比較することが多いからだそうです。

両利きの経営

企業が生き残っていくためであったり、革新的な価値をもたらすためには、イノベーションが必要不可欠です。現代の企業はイノベーションを起こすことを目指しています。

では、イノベーションはどのように起こるのでしょうか。

著者いわく、イノベーションは知識と知識が融合したとき、他者とのシナジー(相乗効果)が発生したときに起こるそうです。そして、この相乗効果は、知識の深さと広さのバランスが丁度良く取れている時に1番発生しやすいんだとか。

ですので、知識の深化を図る(徹底的に一方向の知識を叩き込む)経営方法は悪手ということになります。

知識の深化と知識の探索をバランス良くできる企業づくりが経営者の目指すべきところです。専門の知識の深化、いわば利き手に頼らずに、両利きの経営を行うべきなんですね。

実際に、知識の深化への偏りを防ぐため、Googleは20%ルールを取り入れたり、3Mは15%ルールを取り入れています。

おわりに

世界の経営者が考えていることの大枠が捉えられるだけでなく、染み付いた固定観念までも取り去ってくれるようなとてもいい本でした。

経営学に興味がある人は必読です!