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なぜ、世界のエリートは美意識を鍛えるのか

wollrd expart

山口周さんの『なぜ、世界のエリートは「美意識」を鍛えるのか』を読みました。正直、何気なく手に取ったので、最初は「美意識」の必要性については懐疑的でした(笑)しかし、かなり「美意識」の重要性を思い知らされました。

本書は「経営書」なのですが、企業のみならず、一個人としても当てはまる部分が多かったです。とても興味深かったのでメモしておきます。

目次

 

  1. 「美意識」とは
  2. 美意識がある人の方が能力が高い
  3. これからの時代に美意識が必要な4つの理由
  4. 美意識の鍛え方
  5. おわりに

「美意識」とは

著者は「美意識」を、

全体を直感的に捉える感性であり、「真・善・美」が感じられる打ち手を内省的に創出する構想力や想像力

という定義として捉えています。ざっくり言うと

・理性的・論理的なものではなく、本能的・直感的なもの
・外部からの圧力に流されることのない確固たる「ものさし」

てな感じになります。また、この「美意識」を経営に当てはめると、

・従業員や取引先の心を掴み、ワクワクさせる「ビジョンの美意識」
・道徳や倫理観に基づき、自分たちの行動を律するような「行動規範の美意識」
・自社の強みや弱みに整合する、合理的で効果的な「経営戦略の美意識」
・顧客を魅了するコミュニケーションやプロダクト等の「表現の美意識」

てな感じになるそうです。

美意識がある人の方が能力が高い

自分の中で美意識を持っている人の方が、能力が高い傾向があるそうです。

例えば、オランダのエンドリアン・デ・グルートという研究者は、

ワールドチャンピオンクラスのチェスプレーヤーと街のクラブの常連(つまりアマチュアとしてはそれなりにハイレベルな人たち)の2グループに対し、自分の考えていることを声に出しながらプレーしてもらう。その後、被験者の思考過程を分析する。

といった実験を行ったそうですが、結果

・ワールドチャンピオンクラスのプレーヤーは、最終的に選んだ最良の手が、常に読みの最初の数手の中に含まれていた!
・街のチェスプレーヤー達は、読みの最初の数手の中に、最良の手が含まれることがなかった!

と、驚くべき結果に。つまりは直感、「美意識」こそがエキスパートの重要な条件というわけです。

かの有名な棋士の羽生善治さんも、大量の詰将棋の問題を1問につき1秒から数秒という極端に短い時間で解いてしまうんだそうです。

「じゃあ緻密に思考するのが良くないのか」ということですが、そういうわけでもありません。なんでも、エキスパート達は、最初に浮かんだ直感に対し、緻密な思考を積み重ね、正しさを検証するという作業を行っているそうです。ざっくり言えば、

・直感を大事にする
・その直感の正しさを検証するために、「思考」を使う

ということになります。直感にに重きを置きつつ、「直感の信憑性」をしっかりと疑うことが重要なわけです。

美意識の高さと能力の相関性を示す研究データは、まだあります。ミシガン大学の研究チームが行った調査です。内容は、

ロイヤル・アカデミーの科学者、ナショナルソサイエティの科学者、ノーベル賞受賞者、一般科学者、一般人の5つのグループに対して、「絵画や楽器演奏等の芸術的趣味の有無」について調査する。

というもの。結果、一般人と比較すると、

・ノーベル賞受賞者は、2.8倍芸術的趣味を保有
・ロイヤルアカデミーは、1.7倍芸術的趣味を保有
・ナショナルソサイエティは、1.8倍芸術的趣味を保有

てな結果になったそうです。いやー、正直、ここまで美的感覚によって能力に差が出るとなると、かなり衝撃です。

これからの時代に美意識が必要な4つの理由

著者はこれからの時代に「美意識」が必要な理由を明確に示してくれていました。それぞれざっと紹介します。

1.論理的・理性的思考の限界

論理的・理性的な思考には、限界が存在するそうです。具体的な理由としては、

・膨大な時間が費やされてしまうこと
・差別化が生まれないこと。

この2つがあります。「差別化が生まれない」というのは、論理的・理性的な思考や意思決定からは同じものしか生まず、全ての企業が目指す「イノベーション」が起こらないという意味です。

確かに考えてみればそうですよね。数学見て判断するような、論理的・理性的な思考や意思決定には、「答え」のようなものが存在しています。全ての企業が、同じ答えを追求しているようでは、行き着く先は同じ場所なわけです。

かつてのソニーや、appleのようなイノベーションを生み出すには、本能的で直感的な「美意識」が必要になるということですね。

2.「自己実現消費」の時代へ

既に時代は、便益消費から自己実現消費に移り変わっているそうです。

便益消費とは、「製品やサービスを”便利さ”の尺度で選び、消費する」というもので、自己実現消費とは、「便利さではなく、”自己表現”として製品やサービスを選び消費する」というものです。著者は自己実現消費の例として、「スターバックスでappleのMacを使用している人」を挙げていました(笑)

まあ要するに、便益消費から自己実現消費へと移り変わっていることは、

・製品の質を向上させるような、論理的・理性的な戦略は通用しない
・「美意識」に従い「自己実現」に繋がるような財を生み出す必要がある

ということを意味するわけです。そして、著者いわく、

自己実現市場の登場は日本にとって好機である。自己実現市場においては、「美意識」が非常に重要な競争資源となるが、フランスと並び日本は、世界最高水準の「美意識」を持っている

とのこと。なんでも、明治の開国以来、日本にやってきた数多くの外国人は、「日本の美意識」にかなり高い評価を持っているんだそうです。

日本古来の美意識を上手に取り入れていくことが、これからの日本企業の課題になりそうです。

3.システムがルールに追いつかない時代

著者いわく、

強すぎる「達成欲求」を持っていしまった経営者は、倫理的・法的にギリギリなラインまで踏み込む。その結果、現時点では合法だった行為を、後から違法として裁く状況、いわば「後出しジャンケン」の状況に陥ってしまっている。結局のところ、「達成欲求」を満たすことのみを考える経営者に待ち受けるのは、自身の破滅だ。

とのこと。要は、

法律上はセーフだが、倫理的にアウトな行為が多すぎる

ということを問題視しているわけです。まだ記憶に新しいDeNAを始めとした、ネットベンチャーの一連の不祥事は、「法律上はセーフ」でも「倫理的にアウト」な行為だったというわけです。

だからこそ、

法のような「外的なものさし」ではなく、美意識のような「内的なものさし」に従い行動することが重要

なんだそうです。この点、Googleなんかは企業理念に「邪悪にならない」という内的なものさし、いわば「美意識」を掲げていますよね。一流の企業において「美意識」は必要不可欠みたいです。

4.パターン認識からの脱却

多くの人は「パターン認識」を身に着けたことによって「見る力」を失ってしまっているんだそうです。

パターン認識とは、

エネルギーの省力化し、効率的に過ごすために、「過去にあったアレ」を同じだと見抜くものであり、ステレオタイプな「モノの見方」。

というもの。これだけだと少し分かりづらいですが、小林秀雄の『美を求める心』から引用を読むと、非常に分かりやすいです。

例えば、諸君が野原を歩いていて一輪の美しい花の咲いているのを見たとする。見ると、それは菫の花だと解る。何だ、菫の花か、と思った瞬間に、諸君はもう花の形も色も見るのを止めるでしょう。諸君は心の中でお喋りをしたのです。菫の花という言葉が、諸君の心の内に這入ってくれば、諸君は、もう眼を閉じるのです。ー中略ー 言葉の邪魔の這入らぬ花の美しい感じを、そのまま、持ち続け、花を黙って見続けていれば、花は諸君に、かつて見たこともなかった様な美しさを、それこそ限りなく明かすでしょう。

要は、

「モノ」を見た時に、その「モノ」の定義を認識するだけで満足してしまっており、「見る力」が欠如してしまっている

というわけです。この「見る力」は直感的な判断や、「変化を捉え、変化を起こす」といった行動においても必要不可欠です。そして、この「見る力」を高めるには「美意識」が必要になってくるというわけです。

美意識の鍛え方

著者は、美意識の鍛え方を4つ提示してくれています。以下、美意識の鍛え方です。

1.文学を読む

「偏差値は高いけど美意識は低い」という人に共通しているのが、「文学を読まない」という点だそうです。

文学の作者は、読者に「問い」を与えてくれます。その「問い」に「答え」は存在しませんが、自分なりの美の感覚に照らして、誰の生き様や考え方に共鳴するか考えることで、自分なりの「美意識」を磨くことが出来るんだそうです。

2.絵画を見る

「絵を見るだけ?」と思うなかれ。絵画を見ることは、非常に重要みたいです。これについては、2001年にエール大学の研究グループが興味深い研究を行っています。内容は、

医大生に対して、アートを用いた視覚トレーニングを実施する。その後、診断能力を計測する

というもの。その結果、

・診断能力が56%も向上!
・細部に気づく能力が10%向上!

てなデータが得られたそうです。なんでも、絵画を見ることで、ちょっとしたヒントから洞察する「観察眼」が鍛えられるんだそうです。今すぐ美術館に足を運びたくなりますよね(笑)

3.哲学に親しむ

哲学の主張には、「答え」が存在しません。ですが、「思考のプロセス」は存在するそうで、

・哲学者がどういった思考のプロセスを経て、その理論に至ったのか
・哲学者が、世の中の常識に対して、どのように疑ってかかったのか

ということを感じることで、「美意識」は鍛えられるんだそうです。ちなみに、17世紀以来、エリート養成を担ってきた欧州名門校の多くにおいては、理系・文系を問わずに「哲学」が必修になっているんだそうです。

4.詩を読む

リーダーシップと「詩」の関係は非常に密接なんだそうです。というのも、リーダーシップと誌には「レトリック」が存在するだといいます。レトリックとは、

文章やスピーチに豊かな表現を加えるもの

と定義されます。リーダーシップにおいて「言葉」にパワーを持たせることは非常に重要です。「人のこころを動かす表現」には、必ず優れたメタファーが含まれています。だからこそ詩を読むことで、

・「言葉の引き出し」

を増やすことが重要であり、「言葉の引き出し」が増えるということは「美意識」が高まることを意味するわけです。

おわりに

『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』を読み、美意識の重要性を痛感しました。

個人的には映画が好きなので、「美意識の鍛え方」に映画鑑賞が含まれていなかったのが残念です!

でも、「見て考える」ことを意識すれば映画でも鍛えられそうな気がしますよね。というか、それはいつもやってました(笑)

まあ、とりあえずは哲学に触れて見ようかと思います。。