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『ゼロ・トゥ・ワン』~君はゼロから何を生み出せるか~ の書評をしてみたり

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遅まきながら、『Zero to One』って本を読みましたー。

本書は、PayPalマフィア(PayPalを創業したメンバーで、現在はシリコンバレーで絶大な影響力を持つ)の1人であるピーター・ティールが、「新しい何かを創造する”起業”」について解き明かした一書。本書からは、起業家的思考法や、起業が絶大な力を持つ理由、未来の作り方に関する知見を得ることができます。

「じゃあ、起業を視野に入れていない者には関係がない本なのか」ということですが、僕はビジネスに携わる全ての人が一読すべき本だと思いました。なぜなら、本書で展開される理論は、一つ一つのプロジェクトや活動にも応用することができるからです。それに、一度本書を読めば起業に対する考え方が一変し、起業家精神に火をつけられます(あくまで方法論であって、ビジネスモデルなどに関しては一切触れられていないけど)。

そんなわけで、早速ですが個人的に興味深いと感じた箇所をメモしておきたいと思います!

「ゼロ・トゥ・ワン」とは

まず、本書のテーマでもある「ゼロ・トゥ・ワン」について。著者は、人類の進歩をバッサリ以下の2つに分類し、片方は無意味だと主張します。

○水平的進歩:既に存在する何かをコピーする進歩。こちらが著者に切り捨てられた方。成功事例をコピーするだけだから、「1 to n」と表現される。具体例としては、成功体験を海外に移転するだけのグローバル化が挙げられている。

○垂直的進歩:新しい何かを行う進歩。何も存在しないところから新たな価値を生み出すから「0 to 1(ゼロからイチ)」。具体例としては、テクノロジー(※最近はAIなどの人工知能を意味する言葉として使用されるが、実際は科学技術全般を指す。だから、Amazonのプラットフォームもテクノロジーだし、アップルが生み出したスマホもテクノロジー)が挙げられている。

さらに言えば、一台のタイプライターから1000台のワープロを生み出すのは「水平的進歩」で、一台のタイプライターからワープロ(テクノロジー)を作れば、それは「垂直的進歩」になるとのことです。

人生は宝くじじゃない

浅はかな人間は運を信じ、流れを信じる。強い人間は因果関係を信じる。

ビジネスを取り巻く論争で1番意見が分かれるのは「成功は運か、実力か」という問題。これまでに様々な議論がなされましたが、個人的には「成功=実力×運」が成り立つという主張の方が有力だという認識でした。というのも、数々の著名人は自身の成功を運と絡めて説明するからです。例えば、こんな感じ。

たまたま生まれつきある種のスキルがあった
ービル・ゲイツー
幸運なDNAクラブの一員で、当たりくじを握って生まれた
ーウォーレン・バフェットー
惑星直列のような珍しい現象。運が半分、タイミングが半分で残りが頭脳
ージェフ・ベゾスー

……が、著者は、人生が運によって左右されるのであれば、なぜ人々は努力するのだろうか? という疑問を投げかけ、かつ「運」とは過去を振り返った時に生まれる概念であり、未来を創るのは現在の自分自身の行動であるという立場を取っています。未来がぼんやりとして霞んでいるのなら、その未来を形作るよう努力すべきなのでは?、と。

要するに、未来はコントロールできないが、現在の自分自身の行動はコントロールできるというわけですね。

著者いわく、

起業は、君が確実にコントロールできる、何よりも大きな試みだ。起業家は人生の手綱を握るだけでなく、小さくても大切な世界の一部を支配することができる。それは、「偶然」という不公平な暴君を拒絶するところから始まる。人生は宝くじじゃない

とのこと。パンチラインですねぇ。

『隠れた真実』

とはいえ、これまでに数多くのスタートアップ起業が立ち上がりましたが、事業が続かずその短い一生に幕を閉じています。なぜ、多くの起業家は失敗してしまうのでしょうか。

著者は、失敗したスタートアップは「隠れた真実」が見えいないのだと主張します。

隠れた真実とは、この世に存在せず、誰もが見えていないが、言われてみれば画期的で惚れ惚れするような事実のことを言います。非常に分かりづらいですが、本書ではAppleのiPhoneの事例が挙げられています。

Appleが発売したiPhoneは、携帯電話の常識を変え、かつそれまでに存在しなかった様々なビジネスを生み出し、文字通り世界を変えました。21世紀最大の発明と呼ばれるのも納得です。

しかし、AppleがiPhoneを発売する前、実は複数の企業がタブレット型携帯端末を発売していました。とはいえ、その全てが人気が出ずに売上が伸びず、事業を畳んでいました。なぜなのでしょうか。

それは、Appleだけが「隠れた真実」を捉えていたからです。(スティーブ・ジョブズだけが”といったほうが正しいかもしれませんが)

iPhoneが成功した理由は、iPhoneが「使いやすさ、ミニマリストのように洗練された美しいデザイン、いつでもどこでもインターネントにつながる便利さ」など、それまで人々の頭には存在しなかったものの、言われてみれば画期的で魅力的な真実を表した製品だったからです。

著者いわく、同じことが全てのビジネスに当てはまり、隠れた真実を捉え、それに向かって死力を尽くす起業が成功すると主張します。また、成功したスタートアップは初期の頃、外部の人間からは、カルト集団に見られることが多々あるそうです。なぜなら、外部の人間からは「隠れた真実」が見えていないため、それに向かって死力を尽くす集団が宗教団体のように見えてしまうからです。かつてのスティーブ・ジョブズが束ねるAppleもそうでした。

もっとも、成功した起業家の大半は狂ってる(平均的な人じゃない)そうです。具体的には、以下の2グループのどちらかに偏っていると言います。中間ではありません。

○強い:アスリート、博学、カリスマ、インサイダー、リッチ・ヒーロー、有名

○弱い:おたく、サヴァン症候群、付き合いにくい、アウトサイダー、貧乏・悪党、評判が悪い

「競争」ではなく「独占」

「隠れた真実」を追求するということは、独占を目標とすることに他なりません。なぜなら、隠れた真実はこの世に未だ存在していないものだからです。

僕はここで、「独占よりも、競争して互いにしのぎを削ることで飛躍的に進化できるのでは?」という疑問を持ちましたが、著者は全く逆の立場を取ります。

完全競争下では、長期的に利益を出す起業は存在しない。/永続的な価値を想像してそれを取り込むためには、差別化のないコモディティ・ビジネスを行ってはならない。/独占は、全ての成功企業の条件だ。

確かに言われてみれば、競争下におけるビジネスは水平的進歩に他なりませんし、GAFAやPayPalなどの信じられない速度で成功した起業は皆「独占」しています。

中国古代の思想家である孟子は、かつて「敵国や外患がないと国は必ず滅んでしまう」と主張しましたが、もはや現代では通用しないみたいですね。あ、これは国について言い表しているからそもそも土俵が違うのか。しかも、”個人”に適用したらまた話は別か。いやでも、一個人としても独占を目指したら強いだろうしなぁ。分からない。

ティールの法則

隠れた真実を見つけ、起業する準備が整ったら、次に重要になるのが『ティールの法則』です。ティールの法則とは、著者のピーター・ティールが口酸っぱく言い続けたおかげで、同僚から命名された成功する起業の法則のこと。内容はというと、

・開始時に全て決まるから、最初に全身全霊をかけろ

というもの。なぜ、開始時に全てが決まるのかというと、成長曲線の角度は最初に決まるからです。開始時にアクセル全開で行かないと、成長曲線の角度が極めて緩やかになってしまい、最後まで成長しない体たらくなビジネスになってしまうんだそうです。

この理論は、一個人としても応用できそうですね。資格取得のための勉強とか、受験勉強とか。

停滞か、シンギュラリティか

個人的に著者に共感を持ったのは、著者が人類の繁栄、より良い世界の構築をビジョンとしていること(直接的には述べていないけど)。

最近では、「シンギュラリティ(AIなどのテクノロジーの力が人間を上回るポイントのこと)」という言葉が流行っており、テクノロジーは人類の脅威であると悲観する声がそこらじゅうで挙げられています。

しかし、著者はあくまでテクノロジーは人間の補助であって、人間はテクノロジーを利用して世界を変えるべき、より良い未来を創るべきだと主張します。これを聞くと、「やけに楽観的だなあ」と思ってしまいがちですが、上述したとおり、著者が信じているのはあくまで”因果関係”です。

起業は、未来を創ることに他ならない

未来は誰にも分からないし、シンギュラリティが人類にもたらすインパクトも予測できないーーけど、確かなのは未来は勝手に良くはならないということ。地球も、国家も、企業も、人生も、大切なものは全て「一度限り」。いわく、

今僕たちにできるのは、新しいものを生み出す一度限りの方法を見つけ、ただこれまでと違う未来ではなく、より良い未来を創ることーーつまり、ゼロから1を生み出すことだ。そのための第一歩は、自分の頭で考えることだ。古代人が初めて世界を見たときのような新鮮さと違和感を持って、あらためて世界を見ることで、僕たちは世界を作り直し、未来にそれを残すことができる。

運を嫌い、因果関係を信じ、無根拠ではなくて鮮明なビジョンを持ち行動する。

そんな著者のような『明確な楽観主義者』なりたいなぁ、と思ったり。思わなかったり。

ゼロ・トゥ・ワン(Amazonサイト)